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2015.11.08

起業のための7日間で簡単に会社を設立する全ステップ

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起業を決めたら、まずは個人事業主でいくか法人組織にするかを考えなければならない。

当分は個人事業主であっても、いずれは会社をつくり法人化ししたいと思っている人もいれば、最初から法人組織にしようと思っている人もいる。

個人事業主であれ法人組織であれ、一度は会社を設立するにはどのような手順を踏まなければならないか検討しておく必要がある。

そこで、株式会社を設立するための全ステップを解説するので、ぜひ参考にして欲しい。


1. 会社の概要を決定する
 1-1 商号 / 1-2 本店所在地 / 1-3 事業目的 / 1-4 公告の方法
 1-5 発行可能株式総数 / 1-6 事業年度 / 1-7 機関の設計
 1-8 役員に関する事項 / 1-9 出資に関する事項
2.ホームページの準備
3. 印鑑の作成
4. 定款の作成と認証
 4-1 定款の作成 / 4-2 定款の認証  
5.登記書類の作成
6.設立登記
 6-1 本店所在地を管轄する法務局 / 6-2 会社設立日 / 6-3 登記の期限
 6-4 登記事項証明書の取得 / 6-5 印鑑証明書の取得
7.開業の届出 
 7-1 税務署 / 7-2 都道府県及び市区町村 / 7-3 労働基準監督署
 7-4 公共職業安定所 / 7-5 社会保険事務所
8. まとめ

1. 会社の概要を決定する

会社設立のための準備事項として、まずは会社の骨格を決めなければならない。
また、これらは定款に記載する事項でもある。

1-1 商号

商号とは、会社の名前のことである。会社のイメージを表すことになるのでとても重要なステップである。会社名は基本的に自由に決めることができるが、いくつか約束事がある。

(1)会社名の中に、会社の種類である「株式会社」の文字を入れる
「株式会社」であることを明確にするために、必ず含めなければならない。「株式会社○○」「○○株式会社」などと表記される。

(2)文字の範囲
会社名に用いることができる文字は、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字、及び以下の符号である。
「&」(アンパサンド)
「’ 」(アポストロフィー)
「,」(コンマ)
「−」(ハイフン)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)

なお、符号は、字句を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができる。したがって、商号の先頭又は末尾に用いることはできない。
ただし、「.」(ピリオド)については、その直前にローマ字を用いた場合に省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできる。

(3)入れてはいけない文字
銀行や保険会社など業種によっては、商号の中に「銀行」「保険」の文字を入れなければならない決まりがある。一方、これらの業務を行っていない会社が、これらの文字を商号の中に入れることはできない。

(4)その他使用できない文字等
公序良俗に反するものや記載内容が不明確なものは登記できない。また不正の目的をもって、他社と誤認させる商号を使用することも禁止されている。

1-2 本店所在地

本店の所在地によって会社を管轄する法務局が決まる。

1-3 事業目的

会社が行う事業を明確にする。
将来行う可能性のある事業も含めて検討しておくとよいだろう。ただし、あまりに細かく定款に記載する必要はない。

1-4 公告の方法

公告には以下の2つの方法がある。
■官報に掲載する方法
■電子公告による方法

官報での公告にはそれなりに費用がかかるので、自社サイトでの公告の方が有利である。

1-5 発行可能株式総数

将来の増資を考慮した上で、会社の発行可能な株式数を決めておく。

1-6 事業年度

1年以内の期間(通常は1年間)で、基本的に自由に決めることができる。

例えば以下の方法がある。
■暦年とする方法(1月1日から12月31日まで)
■国の会計年度に合わせる方法(4月1日から翌年3月31日まで)
■業務の繁忙期を考慮する方法

1-7 機関の設計

会社法上は様々な機関設計を想定されているが、ここでは、取締役会非設置会社と取締役会設置会社を説明する。

■取締役会非設置会社
(必要となる機関)
・株主総会
・取締役
小さな会社を前提としている。
取締役がお互いの業務遂行を監督し株主総会も経営に関与する。
外部からの監視圧力は弱い。

■取締役会設置会社
(必要となる機関)
・株主総会
・取締役会
・監査役

取締役会を設置すると、株主総会の決議事項の一部が取締役会に委譲され、株主総会の決議事項が法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限定される。
株主総会は経営に関与しないので、経営を監視する監査役が必要になる。

1-8 役員に関する事項

機関設計ができたら、役員の員数及び任期を決定する。
■取締役の員数
■取締役の任期
■取締役会を設置するか否か
■監査役の員数(取締役会を設置した場合)
■監査役の任期(取締役会を設置した場合)

1-9 出資に関する事項

設立時の出資の金額(資本金の金額)を決定する。資本金は1円でもよいことになっているが、通常、会社を立ち上げて運営していくにはそれなりの資金が必要となる。
会社が軌道に乗るまでの当面の間、どれくらいの資金が必要になるのか、また、そのための資金をどのような形で調達するのかを検討し、設立時の出資の額を決定することになる。

2. ホームページの準備(任意)

必ずしも会社設立のステップに必要なことではないが、この時点でホームページの準備を始めるとよいだろう。

レンタルサーバーを契約し、ドメインを取得しておく。

ホームページは、会社の窓口であり情報の発信の場でもあるので、早期の準備が重要である。

3. 印鑑の作成

会社名が確定したら、印鑑を作成する。
設立登記の書類等に必要となる。
通常、代表印、銀行印、角印を用意する。

■代表印(会社実印)
法律で実印の押印が要求されている場合や会社にとって重要な契約書への押印に使用される。
■銀行印
金融機関の口座開設や銀行取引に関連する書類への押印に使用される。
■角印
領収書や請求書、実印押印の必要ない契約書等への押印に使用される。

4. 定款の作成と認証

定款は会社の概要や決まり事をまとめたものである。会社が事業活動を行っていく上で基礎となる。

「1.会社の概要を決定する」で決めたことに基づいて、定款を作成し認証を受ける。

4-1 定款の作成

取締役会非設置会社の定款の一般的な記載項目を例示すると下記のとおりである。

第1章 総則
 第1条 商号(絶対的記載事項) 
 第2条 目的(絶対的記載事項)
 第3条 本店の所在地(絶対的記載事項) 
 第4条 公告の方法 
第2章 株式
 第5条 発行可能株式総数
 第6条 株券の不発行
 第7条 株式の譲渡制限
 第8条 相続人等に対する株式の売渡請求
 第9条 株式名簿記載事項の記載又は記録の請求
 第10条 質権の登録及び信託財産の表示
 第11条 手数料
 第12条 株主の住所等の届出
 第13条 基準日
第3章 株主総会
 第14条 招集
 第15条 招集権者および議長
 第16条 招集手続きの省略
 第17条 決議
第4章 取締役
 第18条 取締役の員数
 第19条 取締役の選任
 第20条 取締役の任期
 第21条 代表取締役および社長
 第22条 報酬等
第5章 計算
 第23条 事業年度
 第24条 剰余金の配当等
第6章 附則
 第25条 設立に際して出資される財産の価額(絶対的記載必須)
 第26条 設立後の資本金の額
 第27条 最初の事業年度
 第28条 設立時の役員
 第29条 発起人の氏名、住所等(絶対的記載必須)
 第30条 法令の準拠

なお、取締役会設置会社の場合には、以下の項目が追加される。
■取締役会の設置について
■監査役の設置および監査役の員数について
■監査役の選任について
■監査役の任期について

4-2 定款の認証

定款が完成したら、次は公証役場にて、定款が正しく作成されたことを認証してもらうことになる。

【認証の手順】
(1)管轄する公証役場を調べる
  会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場で認証を受けることになる。
  全国公証役場所在地一覧

(2)公証役場訪問のアポイントをとる
  事前に電話等で連絡して公証人のスケジュール調整を行っておく。
  突然の訪問の場合には、その場で認証を受けられないこともある。

(3)訪問前に事前に定款の内容をチェックしてもらう
  予めFAX等を公証人に送り、内容に問題がないかチェックしてもらうとスムーズである。

【用意する書類等】
(1)定款
  定款を3通用意する。それぞれに発起人全員の署名・押印・割印が必要である。
  また、3通は以下の目的に利用される。
  なお、公証役場保管用が原本であり、他は謄本という扱いになる。
  @公証役場保管用(原本)
  A登記用(謄本)
  B会社保管用(謄本)

(2)発起人全員の印鑑証明書
  ※発起人の印鑑証明書は設立登記の際にも必要になるので、一緒に用意しておくとよい。

(3)収入印紙
  40,000円の収入印紙を定款の公証役場保管用(原本)に添付する。

(4)手数料等
  定款認証の費用として公証人に50,000円の手数料を支払う。
  また、謄本用の定款については1ページ250円の作成料がかかる。

(5)委任状
  本来、発起人全員が公証役場へ行かなければならない。
  しかし、行けない場合には委任状を用意する。

5. 登記書類の作成

登記にあたっては、以下の書類が必要になる。
必要書類 備考
登記申請書
収入印紙 登録免許税として最低150,000円。
資本金の金額に0.7%を乗じた金額。150,000円に満たない場合には150,000円。
定款
発起人の決定書
取締役の就任承諾書
代表取締役の就任承諾書 取締役が1名の場合には不要。
監査役の就任承諾書 監査役を設置する場合のみ。
取締役全員の印鑑証明書 取締役会を設置する場合は代表取締役の分のみ。
払込みがあったことを証する書面

上記の他、登記すべき事項をデータにまとめて提出することになる。
また、実印登録した会社印鑑を証明するために印鑑届出書を提出することになる。

6. 設立登記

6-1 本店所在地を管轄する法務局

登記書類の準備ができたら、いよいよ登記をすることになる。会社設立の登記は、本店所在地を管轄する法務局にて行う。

法務局では、「商業登記」の窓口に設立登記申請書及び必要書類を提出する。後日、登記官が審査し、不備がなければ10日ほどで登記が完了する。
不備があればその旨の連絡があり、再度法務局に行って訂正をする。

6-2 会社設立日

会社の設立日は、登記が完了した日ではなく、登記を申請した日となる。特定の日を会社設立日にしたい場合には、その日に申請する必要がある。

また、法人住民税の均等割は、設立初年度においては月割計算されることになる。各月の1日に設立すると設立月も納付の対象となるが、2日以降であれば翌月からが納付の対象となる。

6-3 登記の期限

会社設立の登記は、登記の事由が生じてから2週間以内に行わなければならない。登記の事由は通常、出資額の払込があったことを証する書面の作成日である。

6-4 登記事項証明書の取得

登記が終わったら登記事項証明書を取得しよう。銀行口座の開設や税務署への届出の際に必要となる。

6-5 印鑑証明書の取得

必ずしもすぐに準備しなければならないわけではないが、契約をする際などに必要となる。

7. 開業の届出

7-1 税務署

会社を設立したら、本店の所在地を管轄する税務署に以下の書類を提出することになる。
■法人設立届出書
(添付書類)
 ・定款のコピー
 ・登記事項証明書
 ・設立時貸借対照表(様式自由)
 ・株主名簿(様式自由)
■青色申告の承認申請書
 会社の法人税の申告方法には、青色申告と白色申告の2種類がある。
 青色申告は複式簿記を採用する必要があるため手間だが、税務上のメリットもある。
■給与支払事務所等の開設届出書
■源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
 給与を支払う従業員が10名未満の会社は、源泉徴収の納付を7月10日まで及び1月20日までの年2回にまとめてできる特例がある。この特例を適用するためには、当該申請書の提出が必要である。負担軽減の観点から提出しておくべき書類である。
■棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
 提出しない場合には、最終仕入原価法を採用しなければならない。
■減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
 提出しない場合には、定率法を採用しなければならない。

なお、書類は、それぞれ原本とコピーを用意し、1部は税務署提出用、コピーは受付印を押して貰い会社保管用とする。

7-2 都道府県及び市区町村

都道府県の税事務所の「法人事業税課(住民税課)」及び市町村役場の法人住民税課の両方に法人設立届出書を提出する。
(添付書類)
 ・定款
 ・登記事項証明書

7-3 労働基準監督署

一人でも従業員を雇う場合には、労働保険への加入手続を行わなければならない。
(提出書類)
■労働保険保険関係成立届
(添付書類)
 ・登記事項証明書
■労働保険概算保険料申告書

7-4 公共職業安定所

以下の書類を提出する。
■雇用保険 適用事業所設置届
(添付書類)
 ・労働保険 保険関係成立届
 ・労働保険概算保険料申告書
 ・登記事項証明書
 ・事業所の賃貸借契約書(事業所が存在することを証明するため)
 ・法人設立届
 ・事業所宛に配達された郵便物(事業所が稼働していることを証明するため)
■雇用保険 被保険者資格取得届
(添付書類)
 ・雇用したことを証明する書類(従業員名簿など)

7-5 社会保険事務所

以下の書類の提出が必要になる。
■健康保険・厚生年金保険新規適用届
(添付書類)
 ・登記事項証明書
 ・事業所の賃貸借契約書(事業所が存在することを証明するため)
■健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
■健康保険被扶養者(異動)届

なお、上記以外にも書類の提出を求められることがあるので、事前に社会保険事務所に確認しておくとよい。

8. まとめ

以上が、会社の設立に関する全ステップである。
たくさんの書類を作成しなければならなかため、面倒ではあるが、1つ1つはそれほど難しいことではないので、丁寧に進めていけば問題なく手続は完了するだろう。

注意すべきは、作成や手続の順番を間違えないようにすることである。
無駄な手戻りが生じないよう、全体像をよく理解した上で、各ステップを踏んでもらいたい。

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