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2015.12.12

ネットビジネスのリスクを抑えトラブル回避する法律知識

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インターネットを使った起業はそれ自体簡単であるが、気を付けなければならないことも多い。
ネットビジネスに関係する法律として、例えば会社法、民法、特定商品取引法、個人情報保護法、著作権法、不正競争防止法などが思い浮かぶ。

ちょっとした知識が不足していたことによって、大きなトラブルに巻き込まれ、場合によっては莫大な損害賠償を請求されることにもなりかねない。

そこで、後悔することにならにように、ネットビジネスを始めるに際して押えておきたい法律知識について説明する。

1. ドメイン取得に潜むリスク
2. サイト作成に潜むリスク
3. 許認可の取得
4. 契約締結に潜むリスク
5. 特定商品取引法
6. 個人情報保護法
7. まとめ

1. ドメイン取得に潜むリスク

ネットビジネスを行うには、まずはドメインを取得しなければならない。
ドメイン名の取得は、原則早い者勝ちであり、他者が使っているドメイン名を登録することはできない。

ドメインの取得において留意すべきは、既存のドメイン名と類似したドメイン名の登録は避けるということである。なぜなら場合によっては損害賠償の請求を受ける可能性があるからだ。

例えば、既存の会社「xyz社」が「http://www.xyz.co.jp」というドメイン名を既に登録しているが、その会社のドメイン名に似せて、Aさんが「http://www.xyz.com」というドメイン名を登録した場合を考えてみよう。

Aさんが単にそのドメイン名を使用するだけであれば問題にならないかもしれないが、xyz社が有名企業であり、不正の利益を得る目的がないとは言い難い場合もある。

つまり、不正の利益を得る目的や他人に損害を与える目的といった不正競争行為があるかどうかによって、Aさんのドメイン名の使用が問題になるかどうかが決まってくるのである。

不正競争防止法は、不正競争行為を禁止している。
そして不正競争行為に対しては、ドメイン名使用の停止、ドメイン名の使用により被った損害の賠償請求といったペナルティが課せられることになる。

また、不正競争行為の禁止は、既存のドメイン名だけでなく、突然有名人になった人の名前をいち早くドメイン名に登録して、不正の利益を得ようとするような行為についても適用されることになるので留意が必要である。

2. サイト作成に潜むリスク

サイト作成に際して注意しなければならないのが、著作権の侵害である。綺麗なサイトを作りたいがために、勝手に他人のサイトの写真や文章をコピーしてはいけない。

著作権にはいろいろな種類があるが、複製権と公衆送信権についてみておく。
複製権はコピーする権利のことである(私的使用目的でのコピーは著作権者の許諾は不要である)。
公衆送信権は、公衆送信を行う権利のことである。

したがって、著作権者の許諾を得ずに他社のサイトの文章や写真、音楽等をコピーして使用すると著作権の侵害になる。また、勝手に自分のサイトに掲載すれば公衆送信権の侵害になる。

著作権を侵害した場合には、使用の差止、損害賠償請求、それに刑事罰も課されるので、十分留意が必要である。

また、他人の秘密をサイトに掲載するとプライバシー権の侵害にあたるので、むやみに他人の情報を公開するようなことは避けなければならない。

著作権に関連する権利として、著作者人格権がある。
これは著作者としての権利であり、公表権、氏名表示権、同一性保持権がある。

公表権は、著作物を公開するかどうかを決定する権利のことである。
氏名表示権は、著作物に氏名等を表示する権利である。
同一性保持権は、著作物の内容等を許可なく変更させない権利である。

そして、他者の著作物を使用するには、著作権者の許諾を得なければならない。

なお、引用の場合には許諾の必要はない。
ただし、引用に際しては以下のような細かいルールがあるので留意が必要である。
・本文と引用部分を明確に区別する
・本文が主となり引用部分が従となる
・引用部分が必要最低限である
・著書名や著作名を明示する
など

3. 許認可の取得

ネットビジネスであっても許認可が必要になることがある。

例えば、中古品の販売などは、警察署による古物商の許可が必要になる。
そして無許可・無認可で事業を行うと、重い刑事罰のペナルティがあるので留意が必要だ。

4. 契約締結に潜むリスク

売主Aさんと買主Bさんがいる。Bさんの購入の意思とAさんの販売の意思が合致することで契約が成立する。すなわち、Bさんが注文の意思表示をし、Aさんが承諾の意思表示をしたときに契約成立となる。これにより、Aさんには商品を引き渡す義務と代金を受領する権利が、Bさんには商品を受け取る権利と代金を支払う義務が生じることになる。

しかし、承諾や申し込みの意思表示が欠けている場合には、契約は成立しない。

(1)心裡留保(当事者のいずれかが本心と異なると知りながら本心と異なる行為を行う)
Aさんは、商品を売るつもりがないのに冗談で売却すると言った。Bさんは冗談とは知らなかった。この場合、契約の効力は生じることになる。
しかし、Bさんは冗談と知っていて購入の意思表示をした。この場合は契約の効力は生じない。
【原則】
有効
【例外】
心裡留保による意思表示の相手方が心裡留保を知っていれば無効

(2)錯誤
【原則】
無効
【例外】
錯誤による意思表示をした者に重過失があれば無効を主張できない。
ただし、契約の相手方は無効を主張できる。

(3)虚偽表示
【原則】
無効
【例外】
虚偽表示による意思表示であることを知らない第三者に対して虚偽表示の当事者は無効を主張できない。
ただし、第三者は無効を主張できる。

また、意思表示が成されているとはいえないケースがある。

(4)詐欺
【原則】
騙されて行った意思表示は取り消せる。
【例外】
何も知らない第三者には取消を主張できない。

(5)強迫
取り消せる。

契約は、必ずしも契約書がなくても意思表示だけで成立する。
そのため、契約が有効・無効で揉めるトラブルが頻繁に発生する。
したがって、個々の取引契約が適切に成立しているか否かは、十分に留意する必要がある。

5. 特定商品取引法

ネット販売では、誇大広告や顧客の意思に反した申し込みをさせる行為は禁止されている。
顧客の保護を目的として、販売者に関する重要な情報の開示が求められている。

具体的には、以下のような事項の開示が必要になる。

■販売価格
■支払時期や支払方法
■商品引渡時期
■返還に関する特約事項
■事業者の名称、住所、電話番号
■事業者の責任者の氏名
■申し込み有効期限
■商品代金、送料以外に負担する金銭があるときはその旨
■商品瑕疵の場合の事業者の責任の定め
■特別な販売条件
など

6. 個人情報保護法

個人情報取扱事業者には、個人情報の取扱いに関して大きな義務が課されている。

■本人の許諾を得た利用目的に必要な範囲内での利用義務
■本人に利用目的を伝え許諾を得て適正に個人情報を取得する義務
■本人の同意なしに他人に個人情報を譲渡しない義務
■本人からの要請により個人情報を開示、訂正、利用の停止をする義務
■個人情報の漏えい・紛失等しないよう安全に管理する義務

また、事業者には、これらの義務に対する対応方針や問い合わせ先などを開示することが求められる。

個人情報を漏えいすると事業者に賠償責任が発生するだけでなく、実際、顧客に大きな迷惑をかけることになる。
くれぐれもその管理には十分留意し、適切に行わなければならない。

7. まとめ

ネットビジネスにおけるトラブルを回避するための法律知識について説明した。

■ドメイン取得のリスク
■サイト作成のリスク
■許認可の取得
■契約締結のリスク
■特定商品取引法
■個人情報保護法

ネットビジネスには様々な法律が関わっており、違反した場合には、損害賠償責任や場合によっては刑事責任が課せられる。
後で知らなかったと言っても取り返しがつかないので、十分留意しておく必要がある。



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