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2015.11.10

徹底ガイド!監査及び会計の専門家である
公認会計士の仕事

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公認会計士というと、会計や税務の専門家というイメージが浸透しているが、公認会計士固有の業務は監査の仕事である。

普段なかなか接する機会がない公認会計士の監査業務であるが、監査の現場ではクライアントとの間で、壮絶なやり取りが繰り広げられている。

そこで、公認会計士がどんな仕事をしているのか、また、社会から何を期待され、どのように応えているのかを解説していく。

監査業務で接する機会は少ないかもしれないが、ビジネスを行う上では何かしらの接点が生じることはしばしばある。プロフェッショナルとして、公認会計士の役割を把握し、上手くつきあっていくことは有益であろう。


1. 公認会計士とは
 1-1 公認会計士に期待されること / 1-2 公認会計士の仕事  
 1-3 公認会計士の倫理観
2. 監査業務の概要
 2-1 法定監査と法定外監査 / 2-2 会計監査と内部統制監査
3. 監査の手法
 3-1 リスクアプローチ / 3-2 内部統制への依拠 / 3-3 監査手続
 3-4 意見形成
4. 公認会計士になるには
 4-1 公認会計士試験 / 4-2 実務試験  
5. まとめ

1. 公認会計士とは

公認会計士は、英語でCertified Public Accountantsと表記されることから、その頭文字をとって「CPA」ともよばれる。公認会計士とはどのような存在であるか説明する。

1-1 公認会計士に期待されること

公認会計士法の第1条は、以下のとおり規定されている。

【公認会計士法】
第1条
公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。


(1)監査及び会計の専門家である
  監査及び会計のプロフェッショナルとして社会に貢献する存在である。
(2)独立の立場を保持する
  外形的にも精神的にも利害関係を有しない独立した存在として職務にあたる。
(3)情報の信頼性を確保する
  財務書類等の情報を独立の第三者の立場から保証する。
(4)会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図る
  財務情報が信頼できるかどうかわからない状況では適切な事業活動は行えない。
  財務情報が信頼できるからこそ安心して投資家は出資し、債権者は融資できる。
(5)国民経済の健全な発展に寄与する
  財務情報に信頼性を付与することを通し、国民経済の健全な発展に寄与する。

1-2 公認会計士の仕事

公認会計士の業務は大きく以下の3つに区分される。

(1)監査業務
他者が作成した財務書類等が適正なものであるかどうかを、独立の第三者の立場から検討し、その結果について意見を表明する業務である。
監査を行う公認会計士のことを、監査人とよぶ。

監査人は自己の意見を監査報告書にまとめて依頼者であるクライアント(会社等)に報告をする。そして、この監査報告書を閲覧し、投資家や債権者は出資や融資の判断の参考とする。

ただし、監査報告書に財務書類等が適正である旨の意見が述べられていたとしても、財務書類等にまったく誤りがないことを保証しているわけではない。あくまでも、投資家や債権者の意思決定に影響を与えるような重大な誤りがないことを保証するものである。

また、もしも、監査報告書に財務書類等が不適正である旨の意見が述べられていたら、それこそ大変な事態となる。会社は粉飾決算のレッテルを貼られ、資金調達は勿論のこと、株価の低迷、取引の激減など、事業活動に大きな支障を来すことになる。

だから、監査報告書には財務書類等が適正である旨の意見が述べられるよう、もし誤りや不正が存在すれば監査の過程において修正されることが期待されている。

(2)税務業務
公認会計士は税理士登録して税理士会に入会することによって税務業務を行うことができる。

税務業務としては、具体的には以下のような業務がある。
■企業等への税務指導と税務申告のサポート
■企業再編に伴う税務処理及び財務調査
■移転価格税制、連結納税制度などの指導・助言
■国際税務支援
■その他税務相談、指導・助言等

(3)コンサルティング業務
コンサルティング業務の中身は、正に様々である。
監査及び会計に関連するあらゆる業務を行う。

例えば以下のような業務がある。
■各種相談業務
■各種支援業務
■組織再編などに関する指導・助言、財務デューデリジェンス
■企業再生計画の策定
■株価、知的財産等の評価

クライアントのニーズに応じて、今後も新たな業務に取り組んでいくことになるだろう。

1-3 公認会計士の倫理観

公認会計士は、高潔な倫理観を保持していなければならない。また、自己研鑽に励み独立した第三者の立場から、公正にそして誠実に業務を遂行しなければならない。

公認会計士法の第2条は、以下のとおり規定されている。

【公認会計士法】
第2条
公認会計士は、常に品位を保持し、その知識及び技能の修得に努め、独立した立場において公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。


また、「倫理規則」には、様々なことがうたわれている。

【倫理規則】
第3条
第1項 会員は、常に誠実に行動しなければならず、次のような報告その他の情報であると認識しながら、その作成や開示に関与してはならない。
一 重要な虚偽又は誤解を招く陳述が含まれる情報
二 業務上必要とされる注意を怠って作成された陳述又は情報が含まれる情報
三 必要な情報を省略する又は曖昧にすることにより誤解を生じさせるような場合において、当該情報を省略する又は曖昧にする情報

第4条
第1項 会員は、職業的専門家としての判断又は業務上の判断を行うに当たり、先入観 をもたず、利益相反を回避し、また他の者からの不当な影響に屈せず、常に公正な立場を堅持しなければならない。

第5条
第1項 会員は、適切な専門業務を依頼人又は雇用主に提供できるよう、職業的専門家としての能力を必要とされる水準に維持しなければならない。

第6条
第1項 会員は、正当な理由なく、業務上知り得た情報を他の者に漏えいし、又は自己若しくは第三者の利益のために利用してはならない。
第2項 会員は、業務上知り得た情報を利用しているのではないかという外観を呈することがないよう留意しなければならない。
第3項 会員は、日常の社会生活においても第1項に定める義務(以下「守秘義務」という。)を負い、特に業務上の関係者又は家族若しくは近親者への意図や違反の自覚がないことによる情報漏えいには十分留意しなければならない。
第4項 会員は、潜在的な依頼人や雇用主から得た情報についても守秘義務を負う。
第5項 会員は、会員の監督下にある職員等及び会員の求めに応じて助言・支援を行う者に対しても守秘義務を遵守させる義務を負う。


公認会計士は、誠実な行動、公正な態度の保持、職業的専門家としての能力水準の維持、そして高レベルの守秘義務を果たさなければならない。

2. 監査業務の概要

2-1 法定監査と法定外監査

監査業務には法定監査と法定外監査がある。文字通り、法律で義務付けられている監査と法律で義務付けられているわけではないが、任意で行われる監査がある。

(1)法定監査の種類
法定監査には、例えば以下のようなものがる。
■会社法に基づく監査
■金融商品取引法に基づく監査
■国や地方公共団体から補助金を受けている学校法人の監査
■寄附行為等の許可申請を行う学校法人の監査
■労働組合の監査
■政党助成法に基づく政党交付金による支出などの報告書の監査
■保険相互会社の監査
■信用金庫及び信用組合の監査
■農林中央金庫・労働金庫の監査
■独立行政法人の監査
■国立大学法人の監査
■公益法人の監査など

(2)法定外(任意)監査
法定外の監査には例えば以下のようなものがある。
■医療法人の監査
■社会福祉法人の監査
■宗教法人の監査など

株式会社であっても要件を満たさない場合には法定監査は行われないが(例えば比較的規模の小さな会社)、親会社の意向などにより任意で公認会計士の監査が行われることがある。

2-2 会計監査と内部統制監査

会計監査は、財務書類の妥当性の監査である。内部統制監査は内部統制報告書の妥当性の監査である。

つまり、会計監査では会計情報が適切に作成されているかどうかを判断することになり、内部統制監査では、内部統制が有効に整備・運用されているかどうかについての経営者による評価結果が適切に作成されているかどうかを判断することになる。

3. 監査の手法

3-1 リスクアプローチ

監査といっても、具体的に公認会計士(監査人)が何をしているのかを想像するのは難しいかもしれない。帳簿を見たり電卓を叩いている姿が思い浮かぶぐらいだろう。数字をいじっているというイメージである。

だが、実際には、そのような作業を行う時間よりも、もっと人の話を聴いたりミーティングを行ったりしている時間の方が長いかもしれない。

1年間の会計記録の件数は、膨大な量になる。会社の規模や業種にもよるが相当な件数である。
会社が1年間かけて記録してきた内容を、監査人が全てチェックすることは事実上不可能なことがわかるだろう。

だから、監査は全ての取引について証拠にあたって妥当性を判定するのわけではない。

では、実際には、どのように監査は行われるのだろう。

簡単に言うと、的を絞るということである。
誤りや不正が発生するリスクが高いところを見極めて、リスクの高低に応じて監査の手続を使い分けていくことになる。
限られた人員、時間という監査資源を有効に配分して、リスクの高いところには、より多くの資源を投入し、リスクが低いところは簡便的な手続で済ませなければならない。

これをリスクアプローチという。

リスクアプローチを実践するためには、どこにリスクがあるのかを的確に見極めなければならない。だから、リスクを見極めるために多くの時間を割くことになる。
すなわち、経営者・役員の話を聴くこと、管理職や一般の従業員の話を聴くことが非常に重要である。

会社の業務内容を徹底的に理解し、また、会社の置かれている内外の経営環境を把握する。そうすることにより、次第にどこにリスクがあるのか見えてくる。

また、不適切な財務書類に繋がるケースとしては2種類考えられる。
1つは誤りである。意図せずに起こった間違えのことである。
もう1つは不正である。意図して起こされた間違えのことである。

このうち、不正は財務書類に大きな影響を及ぼす可能性を秘めているので極めて注意が必要である。そして、不正は経営者など会社のトップが関与した場合、より影響が大きく発見が困難となる。

したがって、経営者の誠実性を見極めることが、監査の出発点として最も大切なことである。

3-2 内部統制への依拠

監査は全ての取引をチェックするわけではないことはすでに説明したとおりである。一部の取引を検証して全体の適正性について意見を表明するものである。これを専門用語で「試査」とよぶ。

ところが、この「試査」を行う前提として重要なことがある。
内部統制に依拠できるかどうか、内部統制が有効に機能しているどうかということである。

内部統制とは何かだが、簡単にいうと、業務の誤りを防止または発見するための仕組みと考えてもらえればよい。チェックをするプロセスである。

お金の管理を特定の1人に任せておいたら、いつの間にか使い込みをされたといった話はよくあることだ。だから、多くの会社では上司が毎日残高をチェックして不正を防止・発見できるようにしている。これが内部統制の一例である。

内部統制が有効に整備・運用されていれば、もし、誤りや不正が起こりそうになっても、防止ないし発見されることになる。だから、一部の取引が適切であれば、同じ内部統制を介する取引についても適切であることが推定できることになる。

これが内部統制に依拠できるということである。

だが、内部統制は経営者が意図的に無効にした場合には、まったく機能しなくなる。
その場合、監査人は内部統制に依拠した監査では不正を発見することはできない。

だから、監査人は、内部統制に依拠した監査を行うことを目指すのだが、経営者自身による不正のリスクをしっかりと見極めなければならない。

3-3 監査手続

監査は経営者の誠実性を見極め、リスクを識別するところからスタートする。そしてそのリスクはどのような誤りや不正を生じさせる可能性があるのか、監査人は仮説を立てる。

次に、監査人はその仮説を検証し証拠を集める。この作業が監査手続の実施である。
監査手続の結果、仮設を立証するような証拠が見つからなければ、誤りや不正は存在しないと監査人は判断することになる。

この仮説を検証する手段には、いろいろな方法がある。検証する内容によって監査人は監査手続を使い分けている。

例えば、架空の売掛金を計上しているかもしれないというリスク(仮説)がある。監査人は、会社の取引先に直接売掛金の存在を書面で確認する手続を実施する。これを「確認」という。
取引先が、監査人に対して会社が計上している売掛金と同額を回答すれば、売掛金が実在するとの監査人の心証が深まることになる。つまり、架空の売掛金が計上されているという仮説が否定される。

だが、監査人は一つの監査手続だけでは結論をくださない。他の監査手続も駆使しながら総合的に判断することになる。

3-4 意見形成

監査の対象となる財務書類には、貸借対照表、損益計算書、包括利益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算及び注記事項などがある。

これらが、全体として適正であるか否かを監査人は判断をしなければならない。

判断をくだすまでには、「3-3 監査手続」で説明した仮設、検証、結論のプロセスを様々な場面で繰り返していくことになる。

こうして集められた証拠を総合的に判断して監査人は監査意見を表明する。

また、どのような会社であっても、多かれ少なかれ誤りは存在する。会計処理方法について会社と監査人との間で意見が対立することもしばしばある。

そのような中で、全体として財務書類が適正だといえるのかどうか、投資家や債権者をはじめとした利害関係者の判断を誤らせるような間違えがないかどうかを、監査人は判断しなければならない。

4. 公認会計士になるには

4-1 公認会計士試験

公認会計士になるには、まずは公認会計士試験に合格しなければならない。
公認会計士試験には短答式試験と論文式試験がある。
試験の概略は、以下のとおりである。

(1)短答式試験
【回数】年2回
【試験科目】必須科目:財務会計論、管理会計論、監査論、企業法

(2)論文式試験
【回数】年1回
【試験科目】必須科目:会計学(財務会計論及び管理会計論)、監査論、企業法、租税法
      選択科目:経営学、経済学、民法、統計学
      (1科目)

※短答式試験に合格するとその後2年間は短答式試験を免除される
※論文式試験は、科目合格制となっており、合格した科目は2年間免除が受けられる

4-2 実務試験

公認会計士試験の合格とは別に、以下の条件をクリアーしなければならない。

(1)実務経験
2年以上の実務経験(業務補助又は実務従事)を積まなければならない。
なお、公認会計士試験の合格の前後は問わない。

(2)実務補習
会計教育研修機構などが実施する実務補習を受け必要な単位を修得し、その後、日本公認会計士協会の終了考査に合格しなければならない。

最後に内閣総理大臣の確認を受けて公認会計士登録することができる。

5. まとめ

以上公認会計士の監査業務を中心に、公認会計士とはどのような職業であるか、その仕事内容について説明した。

監査及び会計の専門家であるが、税理士登録をすることにより税務業務を行い、また各種コンサルティング業務も請け負う。

監査・会計の専門家としての公認会計士の一面を、プロフェッショナルとして参考にしてもらいたい。

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