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2015.11.12

小売店必見!消費税の総額表示義務:
端数は切り捨て?

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値札に商品の価格を記載しようとしてふと疑問が湧く。
消費税はどうしたらよいのだろうか?

「別に決まっていないから適当でいいか!」

ちょっと待って欲しい。
消費税の記載の方法はしっかりと決まっている。
総額表示の義務といって、基本的に消費税を含んだ金額で商品の価格を表示しなければならない。
ただし、ここで基本的にといったのは、その例外があるからだ。

そこで、いろいろと迷ってしまうお客様への商品価格の提示方法について詳しく説明する。


1. なぜ総額表示が必要か?
2. 対象となる取引は何か?
3. 対象となる表示媒体は何か? 
4. 総額表示の表示例
5. 総額表示義務の特例
 5-1 特例 / 5-2 誤認防止措置 / 5-3 いつまでに総額表示をすればよい? 
6. 総額表示義務の対象とならないもの 
7. 消費税の端数の処理
8. まとめ

1. なぜ総額表示が必要か?

消費者が商品を購入する際に実際に支払う金額は税込み価格である。
もし、店頭には税抜き価格が表示され、消費者が税抜き価格だと認識できていなかったら、いざ会計をするときに消費者は予想以上の金額を支払うことになってしまう。
そのため、消費者の判断を誤らせないようにするために、最終的に消費者が支払う税込み価格での表示が求められている。

一方で小売店としては、少しでも安い価格で消費者にアピールしたいので、税込み価格ではなく税抜き価格で表示しようとするインセンティブが働く。
もし、表示方法を定めなければ、税抜き価格での表示が主流になってしまう。

そこで、消費者の利便性に配慮するために総額表示の義務を課している。

また、徴税の観点からは、総額表示の方が好ましいのだろう。
税込み価格であれば、納税の意識が希薄になるからである。

2. 対象となる取引は何か?

総額表示をしなければならないのは、小売段階での取引に限られている。

メーカーで商品が生産され、問屋に卸され、小売店に入って、最終消費者に販売される一連の取引の流れがあるが、あくまでも総額表示が義務付けられているのは、小売店と一般消費者の間の取引だけである。
つまり、メーカーと問屋、問屋と小売店といった事業者間の取引には、消費税の総額表示義務はない。

事業者がプロフェッショナルであることを踏まえれば、特に総額表示の配慮をする必要は乏しいといえる。また、事業者は、消費税を納付するが、それは預かった消費税を納めるに過ぎない。あくまでも消費税の負担者は最終消費者であるので、その意味でも事業者への配慮は不要ということである。

3. 対象となる表示媒体は何か?

消費者に対する価格表示を目的にするものであれば、その表示媒体全てが総額表示義務の対象となる。商品に添付した値札、店頭の表示、チラシ広告、新聞やテレビCMなど、全てが対象である。

ただし、あくまでも「表示」について義務付けられているのであって、
「安いよ、安いよ! 1個300円だよ、300円!!」
といった具合に、
価格を口頭で連呼する際にまで税込み価格を要請されるわけではない。

4. 総額表示の表示例

基本的に総額が表示されていればそれでいい。

【表示例】(商品価格:1,000円、消費税:80円)
■1,080円
■1,080円(うち消費税80円)
■1,080円(税込み)
■1,080円(税抜き価格1,000円)
■1,080円(税抜き価格1,000円、消費税80円)
■1,000円(税込み1,080円)※

なお、総額表示の義務はあくまでも表示をする場合には総額で表示しなければならないことを要請したものであり、最初から表示をしていない場合(商品に値札をつけていない場合など)にまで、(総額で)表示を義務付けるものではない。

※文字の大きさや色を変え、「税抜価格」を極端に強調し、消費者に誤解を与えてしまう可能性がある。その場合、総額表示の観点から問題が生じる。


また、グラム当たりで価格設定しているケースや不動産取引の手数料のように総額の一定割合として価格設定しているケースがある。この場合の表示例は以下のとおりである。

■100グラム当たり216円(税込価格)
■売買価格の5.4%(税込) 
 ※売買価格自体が税込みであれば手数料率には消費税分は含めない(手数料率5%)。

5. 総額表示義務の特例

5-1 特例

消費税率の引上げに際し、事業者の値札貼り替え等の負担に配慮する目的で、総額表示義務の特例として、平成25年10月1日から平成30年9月30日までの間、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」を講じていれば税込み価格を表示することを要しない。

【消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法】
第10条
事業者(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第六十三条に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)は、自己の供給する商品又は役務の価格を表示する場合において、今次の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、現に表示する価格が税込価格(消費税を含めた価格をいう。以下この章において同じ。)であると誤認されないための措置を講じているときに限り、同法第六十三条の規定にかかわらず、税込価格を表示することを要しない。
2 前項の規定により税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない。
3 事業者は、自己の供給する商品又は役務の税込価格を表示する場合において、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、税込価格に併せて、消費税を含まない価格又は消費税の額を表示するものとする。


したがって、誤認を防止する措置をとっていれば、税抜き価格だけの表示でもよい。

5-2 誤認防止措置

誤認防止措置には、2つの方法がある。

【商品等の価格に誤認防止措置をとる方法】
■1,000円(税抜き)
■1,000円(税別価格)
■1,000円+消費税
■1,000円(本体価格)

記載した金額が税抜き価格であることが明瞭に消費者に認識できるようにする方法である。

【店内で全体的に誤認防止措置をとる方法】
商品の値札等は、税抜き価格で表示するが、店内の目立つ所に、例えば「当店の価格は全て税抜き表示です」と掲示する。

なお、どのぐらいの大きさで、何か所掲示しなければならないかは、その店舗の大きさや商品の陳列状況、レイアウト等によって異なるので一概には言えない。
ただし、全ての消費者が、容易に認識できるような状況でなければならないだろう。

5-3 いつまでに総額表示をすれがよい?

総額表示義務の特例は、平成30年9月30日までであることから、遅くともそれ以降は特例を受けていたとしても、総額表示にしなければならない。

また、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」第10条第2項では、「…税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない。」と規定されている。

あくまでも努力目標ではあるが、「できるだけ速やかに」税込み価格にて表示することが期待されている。

6. 総額表示義務の対象とならないもの

総額表示は、不特定多数の消費者に対して、値札、チラシ広告、新聞・テレビCM、商品カタログ等において、事前に価格を表示する場合に義務付けられている。

したがって、特定の個人を対象にした見積書、契約書、請求書等については、総額表示義務の対象とはならない。

なお、ホームページ等で見積書を公開している場合は、不特定多数に事前に価格を表示しているため、総額表示義務の対象となる。

7. 消費税の端数の処理

商品の価格を設定する際に、税抜き価格を基礎にすると消費税に端数が生じることがある。
例えば、税抜き価格760円の商品であれば、消費税は60.8円(760円×8%)となる。

このとき、1円未満の端数の処理を、切り捨て、切り上げ、四捨五入のいずれにするかは、事業主の判断で決定してかまわない。

なぜなら、消費税はあくまでも価格の一部であるという考え方が根本にあり、事業主が事業主の裁量で税込みの価格を決定したにすぎないからである。

そして、消費税は、決定された税込み価格のうちの一部として算定されることになる。
つまり、税込み価格を820円とするのであれば、消費税は820円×0.08÷1.08=60.74…円となる。消費税の計算は、あくまで税込み価格を基礎として算定される。

【例】
■税込み価格388円
■税抜き価格360円
■消費税28円

この商品を3個購入した場合、388円×3個=1,164円となる。
このうち、消費税は1,164円×0.08÷1.08=86.22…円である。
したがって、1円未満の端数を切り捨てて86円となる。

だが、商品1個につき消費税は28円だから、3個で28円×3個=84円である。
2円の差が生じるが、84円は認められない。
つまり、商品1個ずつの消費税の端数処理は認められないということである。

8. まとめ

ポイントをまとめると以下のとおりである。

■総額表示義務を満たすためには、消費税込みの金額を必ず記載する。
■総額表示義務の特例を利用して税抜き価格を記載する場合には、必ず税抜き価格であることが明確にわかるようにする。

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