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2015.10.08

簿記を知らなくても決算書を読み解く
4つの重要ポイント

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簿記や会計という言葉には、何だか取っ付きにくい響きがある。しかし、ビジネスパーソンが決算書を分析する機会は意外と多い。

いざ、決算書を目の前にして、慌てて会計の本を眺めていては仕事の機会を逸してしまうことだろう。それではプロフェッショナルとして失格である。

会社の活動は、お金を集めてそれを投資し、その投資から効率的に売上を生み出し、その売上から効果的に利益を獲得する一連のプロセスである。こういった会社の活動に関し、決算書は非常に多くの情報を提供してくれる。
したがって、決算書の理解は、ビジネスでの大きな優位性を生むことになる。

そこで、決算書から読み取れる情報の中でも極めて重要なポイントを、的を絞って解説する。特に詳しい簿記の知識は必要ない。

1. 決算書の利用者とその利用目的

決算書の利用者は、主に、@投資家、A金融機関、B経営者及びその社員である。まずは決算書の利用者が、どのような目的で決算書を利用するのか確認しておく。

1-1 投資家

投資家とは、一般に株主のことを指す。

投資家は、会社に資金を提供して株式を取得し株主となる。そして、資金提供の見返りとして投資先の会社が獲得した利益の分け前(配当金)を受け取る。
これをインカムゲインという。

また、投資家は、変動する株価の売買差益を得ることも期待して株式を取得する。
この差益のことをキャピタルゲインという。

したがって、投資家の関心は、将来受け取る配当金の額と将来の株価にある。
将来受け取る配当金の額は、将来の利益の金額に依存している。
また、将来の株価は、決算書の情報だけでなく、様々な要因によって決定されることになる。

投資家は、将来の配当金と将来の株価に関する情報を読み取ることを主な目的として、投資先の決算書を利用する。

1-2 金融機関

金融機関は、お金を集め、集めたお金を必要とする人に貸し出すことで利益を得る。

したがって、金融機関の関心は、貸出金に対する利息を受け取ることと貸出金を無事に回収することにある。だから、融資先の会社が、安定した利益を上げ、破綻懸念のない安全経営を行うことが、金融機関にとっては重要である。

そこで、金融機関は、会社の収益性や安全性に関する情報を読み取ることを主な目的として、融資先の決算書を利用する。

1-3 経営者及びその社員

経営者及びその社員(以下、「経営者」という)は、自社の決算書、同業他社の決算書、取引先(得意先及び仕入先)の決算書から様々な情報を読み取る。

自社の決算書や同業他社の決算書は、自社の業務改善を目的として利用される。経営者は、経営の安全性や収益性、更に効率性や成長性を分析し、自社の経営に役立てている。

得意先の決算書は、得意先の信用力を把握する目的で利用される。経営者は、掛代金が貸し倒れることなく回収できるだけの安全性を得意先が有しているかどうかを決算書から読み解く。
これは、金融機関の決算書の利用目的に似ている。

仕入先の決算書は、例えば、購入価格決定の交渉材料を探す目的で利用されることがある。経営者は、仕入先の収益性が高ければ、それを値引き材料の一つとする。
    

2. 貸借対照表と損益計算書から何がわかるか

決算書は、複数の財務書類から構成されている。このうち、特に重要な書類が、貸借対照表と損益計算書である。
したがって、この2つの書類を読み解けるようになることが、本記事の目的である。

2-1 貸借対照表と損益計算書を理解する

まずは、貸借対照表と損益計算書が何かを理解してもらいたい。

定義は、以下のとおりである。
■貸借対照表は、会社の財政状態を表す書類である。
■損益計算書は、会社の経営成績を表す書類である。

別に難しく考える必要はない。
例えば、300万円の貯金と100万円の借金がある人がいるとしよう。この人の財産は正味200万円(300万円−100万円)となる。

この状況を貸借対照表に表すと以下のようになる。

現金は財産として貯蓄されている。これは「資産」である。
借入金は将来返済の義務がある。これは「負債」である。
この資産から負債を差し引いた正味の財産のことを「純資産」という。

したがって、貸借対照表は、以下のように表現することができる。

この資産と負債には、現金や借入金以外にも様々なものがあるが、ここでは貸借対照表の概略を押えてもらいたい。

貸借対照表は、一時点(例えば12月31日時点)での財政状態を表している。ここから、資産の状況、負債の状況、そしてその差額である正味の財産(純資産)の状況を理解することができる。

もう1つ、事例を考えよう。
昨年1年間で、給与を500万円もらい、生活費に400万円使ったケースである。残った100万円(500万円−400万円)は貯金した。

この状況を損益計算書に表すと以下のようになる。

給与は労働の対価として獲得した金銭である。これは「収益」である。
生活費は暮らしのために支出した経費である。これは「費用」である。
この収益から費用を差し引いたものを「利益」という。

したがって、損益計算書は、以下のように表現することができる。

この収益と費用には、様々なものがあるが、ここでは損益計算書の概略を押えてもらいたい。

損益計算書は、一定期間(例えば1月1日から12月31日まで)の経営成績を表している。ここから、使った費用の状況、獲得した収益の状況、そしてその差額である利益の状況を理解することができる。

2-2 安全性、収益性、効率性、成長性の指標を理解する

貸借対照表と損益計算書から、会社の状況を理解するにあたって、そこから何を理解できるか整理しておく必要がある。

結論からいうと、これらの書類から、会社の安全性、収益性、効率性及び成長性の大きく4つのことが理解できる。

それぞれが意味するところは、以下のとおりである。
■安全性‐会社が破綻することなく安全に経営できているかどうかの指標
■収益性‐会社がどれだけの利益を獲得する力があるかの指標
■効率性‐会社が経営資源をどれだけ効率的に使って利益を獲得しているかの指標
■成長性‐会社がどれだけ成長しているかの指標

どれも、会社の状況を知る上でとても大事なことである。

2-3 決算書は過去情報に過ぎない

決算書から、会社の安全性や収益性などを読み解くが、1点、注意しなければならないことがある。それは、決算書の数字が、あくまで過去の情報にすぎないということだ。

経営者が、過去の実績を踏まえ、今後の業務改善の足掛かりにするために決算書を利用するのであれば、過去の数字は非常に有用である。
また、過去の実績は、今後の予測をする上で、一定の情報を提供してくれる。

ところが、将来の配当金や将来の株価に関心のある投資家にとって、過去情報だけでは将来の予測はできない。勿論、過去の実績も大事だが、他の要素も考慮していかなければならない。

決算書の数字は過去の結果を表したものであることを忘れないよにして欲しい。

2-4 将来の予測には様々な情報が必要になる

決算書から読み取れる情報以外に、将来の予測に必要な情報について考えてみよう。

その会社の将来の安全性や収益性に影響を及ぼす要因はいったい何であろうか?

それは、会社の内外の経営環境に影響を及ぼす事象のことである。
例えば、経済環境、政治情勢、国際情勢といった外的要因や新商品の開発といった内的要因が考えられる。
為替の変動が、経営成績に大きな影響を与えるといったニュースをよく耳にすることだろう。まさに外的要因である。

他にもたくさんあるが、会社の将来の経営は、本当に多くの要因に左右されることを覚えておいて欲しい。
    

3. 第1ステップ-安全性を見極める

それでは、貸借対照表と損益計算書から読み取ることができるポイントのうち、まずは、安全性に関する指標を説明する。

ここで、もう一度、貸借対照表と損益計算書を見て欲しい。
先ほどのものより、少し詳しくなっているが、本質は同じである。

なお、資産を流動資産と固定資産に、負債を流動負債と固定負債に区分している。
また、単位を【億円】に変更した。

3-1 自己資本比率‐長期の安全性:自己資本÷総資産

会社の長期の安全性を見極める指標に自己資本比率がある。
資産総額のことを総資産ともいい、純資産のこを自己資本ともいう。この自己資本を総資産で割った値、つまり、総資産のうち自己資本の占める割合が自己資本比率である。

貸借対照表の右側を見ると、総資産が負債と自己資本との合計であることがわかる。
この自己資本とは、会社にとっての一種の貯金と考えてもらえれば分かりやすいだろう。これまでに得た利益を貯めた部分である。
ところが、負債は、将来返済をしなければならない義務を負っている。返済義務のない自己資本とは本質的に異なる。

簡単に表現すると、資産は借金部分と貯金部分とで構成されているということだ。今、300万円の現金があり、100万円は銀行からの借入で、200万円は貯金だと想定すればいい。
手元に300万円の現金があっても100万円は将来返済しなければならない。そうであれば、返済義務のない貯金の割合が大きければ、それだけ生活にゆとりが生まれることになる。

会社にとっても同じことがいえる。
自己資本比率が高ければ、それだけ経営にゆとりが生まれるということだ。

仮に業績が悪化し、損失が発生したとしても、自己資本比率が高ければ、これまでの貯金を取り崩して会社は苦境を乗り越えていくことができるだろう。
そういう意味で、自己資本比率は長期的に安全経営ができるかどうかを判断する指標の一つとなる。

一方、自己資本比率が低いと、業績悪化が会社の存続に大きな影響を及ぼしかねない。自己資本比率が0%を下回ると、資産よりも負債の方が大きくなり(債務超過という)、極めて危険な状況にある。

3-2 流動比率‐短期の安全性:流動資産÷流動負債

簡単にいうと、流動資産とは一年以内に現金化される資産のことであり、流動負債とは一年以内に支払期限の到来する返済義務のことである。
この流動資産を流動負債で割った値を流動比率という。

流動資産が流動負債を上回っている状態を想定しよう。つまり流動比率が100%を超過している状態である。この場合、支払金額よりも受取金額の方が大きいので、短期的な支払能力に余裕があることを意味する。

逆に、流動負債が流動資産を上回っている場合、会社は資金ショートを起こす可能性がある。いわゆる黒字倒産である。

このように流動比率は、会社の短期的な支払能力を判断することができるので、短期的な安全性を判断する指標として有用性が高い。
しかし、貸借対照表は一時点の情報に過ぎず、実際の入金や出金のタイミングまでは考慮していないので、流動比率は必ずしも万能な指標とはいえない。

なお、流動比率は、高いほど支払能力が高いといえる。

4. 第2ステップ-収益性を見極める

次に収益性に関する指標について説明する。

4-1 売上高利益率:利益÷売上高

会社の収益性を判断する指標に売上高利益率がある。これは利益を売上高で割った値である。売上高のうちどのくらいの割合が利益になるかを示している。

この値が高ければ、それだけ収益性が高いことを意味する。
1,000円で売って300円の利益が得られる(売上高利益率30%)商品と、600円の利益が得られる商品(売上高利益率60%)とでは、勿論、後者の方が儲けが大きい。

利益には、いろいろな種類があるが、売上高から仕入原価を差し引いたものを売上総利益(一般に粗利)という。
売上総利益を売上高で割った売上高総利益率は粗利率ともいわれる。この粗利率が高ければそれだけ利益を生む力も大きくなる。

会社には仕入原価以外にも販売に関する費用や人件費など、様々な費用が発生する。これらの費用を粗利でまかなって初めて、最終的な利益が確定される。
粗利率が高ければ、それだけ仕入原価以外の費用をまかなう上で有利になる。

例えば、電子書籍のように、物体がないデータだけの商品は、コストをかけて増刷するという概念はなく、いくつでもすぐに複製できてしまう。だから、非常に粗利率が高いといえる。販売価格の大部分が利益に直結する。

一方、類似品が多く、競合会社もひしめき、質よりも低価格が重視されるような商品を扱っていると、一般に粗利率は低くなる。そのため売上高を増やさなければ、利益を増やすことはなかなかできない。薄利多売という言葉があるが、たくさん売って初めて利益を確保できる。

このように、売上高利益率の値は、取り扱う商品や業界によって大きく幅がある。業界の平均を押えておくことが大きなポイントである。

4-2 総資産利益率:利益÷総資産

総資産に対する利益の割合を示す指標に総資産利益率がある。
利益を総資産で割った値である。

会社は、資産があって初めて事業を行うことができる。事業を行うための設備を投資し、商品や製品を売って利益を獲得する。
総資産利益率から、事業に投下した資産によってどれだけの利益を得たか知ることができる。

少ない資産で多くの利益が獲得できれば、つまり、総資産利益率が高ければ、それだけ儲ける力があるということである。

5. 第3ステップ-効率性を見極める

次に効率性に関する指標について説明する。

5-1 総資産回転率:売上高÷総資産

総資産回転率は、売上高を総資産で割った値である。事業に投下した総資産がどれだけ効率的に活用されたかを示す指標である。

売上高が総資産の何倍あるかによって、会社が調達した総資産の有効活用度合いを判断することになる。

総資産回転率が高ければ、それだけ、投下した資産が有効に活用され、より多くの売上高を生み出したことを意味する。

5-2 売上高利益率と総資産回転率の関係

ここで、注意してもらいたいことがある。売上高利益率と総資産回転率の関係である。

それぞれの算定式は以下のとおりである。
■売上高利益率=利益÷売上高
■総資産回転率=売上高÷総資産

どちらにも、売上高が含まれていることに着目して欲しい。
すると以下の式が成り立つことがわかる。

売上高利益率×総資産回転率=(利益÷売上高)×(売上高÷総資産)
             =利益÷総資産
             =総資産利益率

つまり、総資産利益率=売上高利益率×総資産回転率ということである。

売上高利益率が高ければ高いほど、また、総資産回転率が高ければ高いほど、総資産利益率は高くなるという関係にある。

仮に、総資産利益率があまり高くないようであれば、それは売上高利益率が低いのか(収益性が悪いのか)、総資産回転率が低いのか(効率性が悪いのか)、または、その両者であるのかを分析することになる。

5-3 1人当たり売上高・1人当たり利益

効率性を判断する指標として1人当たり売上高と1人当たり利益も重要である。

これらの指標を算定するには、会社の人員数を把握しておく必要がある。
算定式は単純である。

■1人当たり売上高=売上高÷人員数
■1人当たり利益=利益÷人員数

文字通り、1人当たりどれだけの売上や利益を上げたかを示す指標である。この指標が大きければそれだけ効率的な経営が行われたことを意味する。

ただし、利益を度外視して赤字覚悟で売上を増やしても意味はない。したがって、1人当たり売上高だけでなく、必ず1人当たり利益も検討する必要がある。

6. 第4ステップ-成長性を見極める

次に成長性に関する指標について説明する。増収率と増益率である。

6-1 増収率:(当期売上高−前期売上高)÷前期売上高

増収率は、当期と前期の売上高の差額を前期の売上高で割った値である。これにより、売上高が前期と比較してどの程度増えたかを把握することができる。

6-2 増益率:(当期利益−前期利益)÷前期利益

増益率は、当期と前期の利益の差額を前期の利益で割った値である。これにより、利益が前期と比較してどの程度増えたかを把握することができる。

増収率も増益率も、売上や利益の規模の増加率であり、成長性を判断する指標とされる。
増収率と増益率はそれぞれ単体で理解するよりも、両者の関係から分析を進めることで、より多くのことを理解することができる。

増収率に比べて増益率が低いようであれば、利益率が低下したことになる。逆に増収率に比べて増益率が高いようであれば、利益率が上昇したことになる。
それぞれ、その要因を分析して、経営改善に繋げていくことになるだろう。

7. 投資家目線のポイント

次に、投資家目線で決算書を分析す際のポイントを解説する。投資家の関心は、将来の配当金と将来の株価である。その観点から理解して欲しい。

7-1 株価の変動要因

まず、投資家の関心の1つである株価の変動要因について説明する。株価の変動は市場における株の売却と購入のバランス関係によって生じる。購入したい人が多ければそれだけ株価が上がる。一方、売却したい人が多ければ株価は下落することになる。

それでは、どのような時に株を購入したいと思うだろうか。
例えば、

(1)好業績である
たくさんの利益を上げれば、それだけ配当も増えることが期待されるので、株購入の動機が働く。

(2)配当を増やす
配当を増やしたり、復配するとなれば、当然、人気が出る。

(3)業績の上方修正
業績が予想以上に良くなるのであれば、株購入のインセンティブが働く。

(4)新規開発の成功などの発表
こういった情報も、将来の業績アップが期待されるので、株購入の動機となる。

他にも、いろいろなケースが考えられる。

逆に、どのような時に株を売却したいと思うだろうか。
買いたい時の逆を考えればよい。

(1)業績の悪化
(2)配当をやめる
(3)業績の下方修正)
(4)不祥事の発表等

7-2 配当性向:
   1株当たりの配当額÷1株当たりの利益

配当性向は、1株当たりの配当額を1株当たりの利益で割った値である。これは、会社が1年間で稼いだ利益からどれだけ配当金として株主に還元しているかを示す。
短期的には、投資家にとって、配当金が多いにこしたことはない。だから配当性向が大きいことは好まれる。

しかし、会社は、稼いだ利益を次の投資に回さなければ、将来、利益を稼ぐことができなくなる。そのため、会社にとっては、社内に貯金もしなければならない。

そのあたりのバランスが重要になる。

7-3 配当利回り:
   1 株当たりの年間配当金額÷1株当たりの購入価額

配当利回りは、1株当たりの年間配当金額を1株当たりの購入価額で割った値である。購入した株価に対し、1年間でどれだけの配当を受ける取ることができるかを意味する。

投資家にとって、配当利回りが高いにこしたことはない。

7-4 株価収益率(PER):
   株価÷1株当たり利益

株価収益率は、株価を1株当たり利益で割った値である。これは、会社の利益との関係で株価がどのような位置にあるのかを判断する指標となる。この値が低ければ低いほど、利益に対して株価は、いわゆる「割安」となる。

また、株価収益率は、投資した金額の回収期間の目安ともなる。例えば1,000円で株を購入し、年間の1株当たり利益が500円であれば、株価収益率は2倍となり、1,000円の投資を回収するには2年かかることになる。

7-5 株価純資産倍率(PBR):
   株価÷1株当たり純資産

株価純資産倍率は、株価を1株当たり純資産で割った値である。これは会社の純資産と株価の関係を表している。この値が低ければ低いほど、純資産に対して株価は「割安」となる。

理論上、会社の価値は、純資産の額と将来稼ぐであろう利益の現在価値の合計である。仮に将来稼ぐことができなかったとしても、現在の会社の価値は最低でも今ある純資産の額となる。したがって、株価純資産倍率は、理論上「1」を下回らない。

そのため、もし株価純資産倍率が1を下回っている場合には、かなり「割安」だといえる。

7-6 株主資本利益率(ROE):
   1株当たり利益÷1株当たり純資産

株主資本利益率は、1株当たり利益を1株当たりの純資産で割った値である。なお、純資産のことを株主資本ともいう。
株主資本利益率は、総資産利益率と同様、会社の収益性を判断する指標である。

この株主資本利益率については、以下の関係式が成り立つ。

株主資本利益率=1株当たり利益÷1株当たり純資産
株価×株主資本利益率=株価×1株当たり利益÷1株当たり純資産
(株価÷1株当たり利益)×株主資本利益率=(株価÷1株当たり純資産)
株価収益率×株主資本利益率=株価純資産倍率

したがって、7−5で、株価純資産倍率が低ければ低いほど、株価は「割安」だと説明したが、その要因には、株価収益率と株主資本利益率の低さが関係している。

株価収益率は低ければそれだけ株価は「割安」となり、投資家にとっては好ましいが、もし、株価純資産倍率の低さが、株主資本利益率の低さに起因しているのであれば、注意が必要である。
そもそも会社の収益性自体が低いのであれば、株価の値上がりも期待できない

8. 比較することで指標の意味を理解する

以上、決算書を理解するポイントとして、いくつかの指標について説明してきた。しかし、その指標単独では、その数値の意味を理解することはできない。

指標は、比較することによって、初めて意味のあるものになる。
比較方法には、経年比較と同業他社比較がある。

8-1 経年比較

経年比較は、同じ会社の過去の数値と比較することである。これにより、数値が改善されたのか悪化したのかがわかる。

8-2 同業他社比較

同業他社比較は、文字通り、同じ業界の他社の数値と比較することである。これにより、同じ業種内での会社の位置付けを把握することができる。業種ごとにそれぞれの指標の平均値もあるので、それとの比較も有効である。

8-3 理由を理解する

比較をすることで、数値に差が生じていることを把握できるが、一番大事なことは、その差がどのような要因で生じているかを理解することである。

例えば、売上高利益率が上昇したとしよう。
売上高利益率=利益÷売上高である。

まずは、利益が増加したのか、売上高が減少したのかを把握することになる。
もし利益が増加したのであれば、売上高に変化がなければ、費用が減少したことになる。

どのような費用が減少したのだろうか?
その減少は一時的なものなのか?
将来の売上を減少させることにはならないか?

いろいろ検討しなければならない。

もし、売上高が減少したのであれば、
それはなぜか? 
今後も減少するのか? 
売上高が減少しても利益が減らない理由は何か?

同様に検討しなければならない。

そして、数値の変化の要因が、会社にとってGoodなのかBadなのかを見極めていかなければならない。この変化の要因を理解することが、決算書を理解する上で最も重要となる。

まとめ

決算書を読み解くうえで、以下の4つのポイントがある。
(1)安全性
  <主な指標>
  自己資本比率
  流動比率
(2)収益性
  <主な指標>
  売上高利益率
  総資産利益率
(3)効率性
  <主な指標>
  総資産回転率
  1人当たり売上高・1人当たり利益
(4)成長性
  <主な指標>
  増収率
  増益率

また、株主目線では、以下の指標も重要である。
(1)配当性向
(2)配当利回り
(3)株価収益率
(4)株価純資産倍率

そして、最も重要なことは、各指標について、経年比較、同業他社比較を行い、数値が変化した要因を理解することである。

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