HOME / 税金 / これだけは覚えておきたい消費税の仕組みと計算方法



   

2015.10.12

これだけは覚えておきたい消費税の仕組みと
計算方法

  はてなブックマークに追加  

ビジネスを行う上で、消費税の知識は避けて通ることはできない。経理に携わる者だけが知っていればよいという類のものではなく、プロフェッショナルであれば少なくともその概要は押えておかなければならない。
なぜなら、ビジネスパーソンは何らかの形で、消費税と関わりを持つからである。

普段、何気なく支払っている消費税であるが、その仕組みは意外と理解されていない。だが、あやふやな知識によって思いもよらない不利益を被ることもあるので、この機会にポイントを整理してもらいたい。

Contents
1. 消費税とは
 1-1 事業者とは / 1-2 事業とは / 1-3 対価を得て行うとは / 
 1-4 資産の譲渡、貸付及び役務の提供とは / 1-5 輸入取引 / 1-6 間接税とは
2. 消費税の納付と負担の仕組み
3. 取引の分類
 3-1 課税取引 / 3-2 非課税取引 / 3-3 不課税取引 / 3-4 免税取引 
4. 課税取引の判定
 4-1 取引を分類する / 4-2 輸入取引の判定 / 国内取引の判定 
5. 課税標準及び税率 
6. 税額の計算方法 
 6-1 計算式 / 6-2 仕入控除税額の計算 / 6-3 課税売上割合 
7. 中小事業者に対する特例 
 7-1 納税義務の免除 / 7-2 簡易課税制度 
8. まとめ

1. 消費税とは

消費税とは、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供並びに輸入取引を課税対象とした間接税のことである。
少しわかりにくいので、1つずつ解説する。

1-1 事業者とは

事業者とは、個人事業者と法人のことをいう。個人事業者は、例えば、商売をしている人、医師や弁護士といったサービス提供者のことである。法人とは、自然人(権利能力が認められる社会的実在としての人間のこと)以外で法律上権利義務の主体となる資格を有する存在のことである。株式会社、国や都道府県・市町村、医療法人、宗教法人などいろいろある。

1-2 事業とは

同じ種類のことを独立して、継続的に、繰り返し、行うことである。

1-3 対価を得て行うとは

簡単に言えばお金を受け取って行うことをいう。商品を販売すれば商品代金を、サービスを提供すればその報酬代金を受け取るということである。

1-4 資産の譲渡、貸付及び役務の提供とは

資産の譲渡は、例えば商品の販売のことである。資産の貸付は、例えば事務所の貸付のことである。役務の提供は、例えば宿泊サービスの提供である。

1-5 輸入取引

輸入取引は消費税の課税対象となる。国内で消費されるからである。一方、輸出取引は免税となる。外国で消費されるものは課税の対象としないからである。

1-6 間接税とは

税金を納める者(納税者)と税金を負担する者(担税者)とが異なる税のことである。消費税の負担者は消費者であり、事業者が消費税を納付することになる。

2. 消費税の納付と負担の仕組み

まずは、下図を見て欲しい。

メーカーであるA社が製品をつくり代金5,000円、消費税400円、合計5,400円で問屋であるB社に卸した。B社は、1,000円の利益をのせて、代金6,000円、消費税480円、合計6,480円で小売店であるC社に販売した。
C社は、1,000円の利益をのせて代金7,000円、消費税560円、合計7,560円で消費者であるX氏に販売した。

A社は400円の消費税を納付することになる。B社は80円(480円−400円)の消費税を納付することになる。そして、C社は80円(560円−480円)の消費税を納付することになる。

A社、B社及びC社の納付税額の合計は、560円(400円+80円+80円)となる。これはX氏が代金7,000円の製品に対して支払った消費税560円に相当する。

この図をみてもらえばわかるが、結局、消費税560円は、X氏が負担しており、A社、B社及びC社は、単に預かった消費税を納付しているにすぎない。このように納税者と負担者が異なることから、消費税は間接税になる。

3. 取引の分類

消費税の課税の見地から、取引は@課税取引、A非課税取引、B不課税取引、C免税取引の4つに分類される。課税の対象となる取引か否かの判断に際し非常に重要な分類となるため、しっかりと理解してもらいたい。

3-1 課税取引

国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供並びに輸入取引のことである。

3-2 非課税取引

国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等の取引であっても、課税対象としてなじまないものや政策的見地から消費税を課税しない取引のことである。

消費税基本通達では、非課税取引として、以下の13項目を列挙している。

1. 土地等の譲渡及び貸付け関係
2. 有価証券等及び支払手段の譲渡等関係
3. 利子を対価とする貸付金等関係
4. 郵便切手類等及び物品切手等の譲渡関係
5. 国等の手数料及び外国為替業務等関係
6. 医療の給付等関係
7. 社会福祉事業等関係
8. 助産に係る資産の譲渡等
9. 埋葬料又は火葬料を対価とする役務の提供関係
10. 身体障害者用物品の譲渡等関係
11. 学校教育関係
12. 教科用図書の譲渡関係
13. 住宅の貸付け関係

3-3 不課税取引

課税取引に該当しない取引のことである。例えば、寄付などの対価性のない取引や国外取引が該当する。

3-4 免税取引

課税資産の譲渡等に該当するが、外国で消費するものには課税しないとの考えに基づき、その売上について消費税が免除される商品の輸出や海外事業者へのサービス提供などの輸出類似取引のことである。

4. 課税取引の判定

では、課税取引か否かの具体的な判定方法について解説する。まずは、下図をみて欲しい。

4-1 取引を分類する

第一に、取引を国内取引、輸出取引、輸入取引及び国外取引に分類する。
これにより、輸出取引は免税取引として、国外取引は不課税取引として処理することになる。

4-2 輸入取引の判定

輸入取引の課税対象は、「事業として対価を得て行われる」ものに限られない。無償の場合や事業として行われない場合も課税の対象となる。つまり、個人的に飲用する目的でワインを輸入したとしても課税される。したがって、不課税取引はない。
消費税法第4条第2項には、「保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する」とある。

ただし、消費税法第6条第2項(「保税地域から引き取られる外国貨物のうち、別表第2に掲げるものには、消費税を課さない」)で、非課税取引を設けている。

消費税法<別表第2>
1. 有価証券等.
2. 郵便切手類
3. 印紙
4. 証紙
5. 物品切手等
6. 身体障害者用物品
7. 教科用図書

輸入取引について、非課税取引に該当するか否かを検討し、該当しない取引は課税取引と判断することになる。

4-3 国内取引の判定

まず、国内取引の非課税取引13項目に該当するか否かを検討する。
該当すれば、その取引は非課税取引として処理する。

次に、非課税取引に該当しない取引について、課税取引に該当するか否かを検討する。
具体的には、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供」に該当する取引かどうかを検討する。

5. 課税標準及び税率

消費税の課税標準は、資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供によって受け取る金額である。
なお、輸入取引の課税標準は、関税課税価格に消費税以外の個別消費税の額及び関税の額を加算した合計額である。(※課税標準は、税額計算の基礎となる金額のことである。)

課税標準に乗じる税率は、平成27年4月1日現在、以下のとおりである。

6. 税額の計算方法

6-1 計算式

消費税の納付額は以下の算式に基づいて計算される。少し面倒くさいがしっかりとおさえて欲しい。

【消費税】
消費税の納付税額=@課税売上に係る消費税額−A課税仕入に係る消費税額

@課税売上に係る消費税額=課税売上高(税抜)×6.3%
A課税仕入に係る消費税額=課税仕入高(税込)×6.3÷108

【地方消費税】
地方消費税の納付税額=消費税の納付税額×17÷63

6-2 仕入控除税額の計算

課税売上げに係る消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額(以下「仕入控除税額」という。)の計算方法には、以下の2つのケースがある。

(1)その課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上の場合
課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額を控除する。

(2)課税期間中の課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満の場合
課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、課税売上げに対応する課税仕入れに係る消費税額部分のみを控除する。

なお、課税売上に対応する課税仕入れに係る消費税額の算定方法には以下の2つの方法がある。

@個別対応方式
課税仕入れに係る消費税額を3つに区分する。
ア 課税売上げにのみ対応する課税仕入れ
イ 非課税売上げにのみ対応する課税仕入れ
ウ 課税売上げと非課税売上げに共通して対応する課税仕入れ

(算式)仕入控除税額=ア+(ウ×課税売上割合)

A一括比例配分方式
個別対応方式のように課税仕入れに係る消費税額を3つに区分できない場合、一括比例配分方式を採用する。

(算式)仕入控除税額=課税仕入れに係る消費税額×課税売上割合

6-3 課税売上割合

(算式)課税売上割合=課税売上高(税抜)÷総売上高(税抜)
          =(課税取引+免税取引)÷(課税取引+非課税取引+免税取引)

※不課税取引は消費税の適用対象ではないため除外される。

7. 中小事業者に対する特例

7-1 納税義務の免除

その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除される。なお、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となる。

なお、課税期間、基準期間、特定期間の関係は下図のとおりである。

(基準期間)
個人事業者:課税期間の前々年のこと
法人   :課税期間の前々事業年度のこと
(特定期間)
個人事業者:その年の前年の1月1日から6月30日までの期間のこと
法人   :その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間のこと

なお、免税事業者は、仕入れにかかった消費税額の控除ができないので還付は受けられない。そのため、輸出業者のように常に還付が発生する事業者は、免税事業者の要件を満たしていたとしても課税事業者となることを選択できる。

7-2 簡易課税制度

基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れに係る消費税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額を計算できる簡易課税制度の適用を受けることができる。

(算式)仕入控除税額=課税売上げに係る消費税額×みなし仕入率

なお、みなし仕入率は、業種ごとに下記のとおり定められている。

第一種事業(卸売業)   90%
第二種事業(小売業)   80%
第三種事業(製造業等)  70%
第四種事業(その他の事業)60%
第五種事業(サービス業等)50%
第六種事業(不動産業)  40%

簡易課税制度は、実際の課税仕入れに係る消費税額を計算する必要がないので、処理が簡便である。

また、みなし仕入率により算定された仕入控除税額が、実際の課税仕入れに係る消費税額よりも大きくなれば、簡易課税制度を採用することにより納税額は減ることになる。しかし、逆の場合には、簡易課税制度の採用により納税額は増えることになる。

なお、簡易課税制度を採用するには、課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を届け出なければならない。また、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すると、2年間は実額計算により仕入控除税額を算定する方法に変更することはできなくなるので注意が必要である。

8. まとめ

納税者と負担者が異なる消費税の概要をおさえていただけたと思う。

取引は、課税取引、非課税取引、不課税取引及び免税取引の4つに分類できる。
このうち消費税の課税対象は、課税取引であり、課税取引か否かを判定する方法についても解説した。

また、税額計算のロジックと中小事業者に対する特例についても整理した。

いづれも基本的な事項であるので、確実にマスターしておいて欲しい。

はてなブックマークに追加  



contents